
「今の仕入れ先、変えたほうがいいのかな」
サロン様とお話ししていると、この相談をよくいただきます。ただ、話を伺っていくと、替えたほうがいい場合と、替えても同じことが起きる場合の両方があります。
この記事では、美容室の仕入れ先をどう選ぶかを整理します。ランキングや一覧は載せません。理由は本文でお話ししますが、ひとことで言えば自社を上位に置いた一覧をお見せしても、お店選びの役に立たないからです。
最初に、私たちディーラー側の話から始めます。サロン様のメニューが増えすぎて利益が出なくなる原因の一つは、私たちの売り方にあるからです。
- 仕入れ先は「規模の大きさ」では決まらない。決まるのは、自店のメニューを一緒に設計できる相手かどうか
- 選ぶ前に、自店で「時間・コスト・単価」の3つを決めておく。ここが決まっていないと、誰に相談しても商品の話になる
- 見極める質問は5つ。いちばん大事なのは「やめましょう」と言ってくれるかどうか
「変えたほうがいいのかな」と思ったとき
ご相談のきっかけは、だいたい決まっています。
よくあるきっかけ
- 担当者がなかなか来ないので、新しい情報が入ってこない
- 来てくれても、新商品の案内で終わってしまう
- 価格の話ばかりで、メニューや教育の相談ができない
- 担当者が替わってから、話が通じなくなった
どれも、そのままにしておくとお店の損になります。仕入れは毎月続くものですし、情報が入らない状態が一年続けば、それは一年ぶんの差になります。
同じお悩みは、当社のディーラー事業のページでも最初に挙げています。
ただ、替えても同じことが起きる場合があります
一方で、替えたのに半年後に同じ不満が出てくるお店もあります。私たちが引き継いだお店でも、実際にありました。
その場合、原因は相手側だけにあるとは限りません。お店として「何を相談したいのか」が決まっていないと、相手はどうしても商品の話をしに来ます。商品の話しかできないのは、担当者の力量の問題であることもありますが、相談の入口が用意されていないことも同じくらいあります。
ですので、この記事では「どこを選ぶか」の前に、「自店で何を決めておくか」から順にお話しします。
先に、私たちディーラー側の話をします
選び方をお伝えする前に、自分たちの側の話をさせてください。そうしないと、この先の話が「他社の悪口」になってしまうからです。
メニューが増えすぎる原因は、商品ベースの営業にあります
サロン様のメニュー表を拝見すると、似たようなメニューがいくつも並んでいることがあります。トリートメントが4種類あって、スタッフも違いを説明しきれない。そういう状態です。
こうなる流れは、だいたい同じです。各社のディーラーが、それぞれ良いと思う商品を持ってきます。お店は断りきれずに1つ入れる。次の会社がまた持ってくる。半年ごとにこれが繰り返されると、お店の意思ではなく、来た順番でメニューが決まっていきます。
そして、増えたメニューは在庫になり、使われない商品が棚に残ります。

板場の視点
これは、やっぱりディーラーの責任もあるんです。そこは謝らないといけないと思っています。商品を持っていくこと自体が悪いのではなくて、お店がどうなりたいかを聞く前に商品の話から始めてしまうことが、結果としてメニューを壊しています。自戒を込めて書いています。
ですから、この記事の選び方は「良いディーラーの見つけ方」というより、「お店のメニューを守れる相手かどうかの見分け方」だとお考えください。
なぜ「ランキング」や「一覧」で選ぶと外れるのか
仕入れ先を探すとき、まず一覧やランキングを調べる方が多いと思います。ただ、それで決めると外れやすい理由が2つあります。
規模と、自店に合うかどうかは別の話です
会社の規模が大きければ、取扱メーカーの数は多くなります。物流も安定しています。そこは事実です。
ただ、お店に来るのは会社ではなく担当者です。どれだけ大きな会社でも、担当者が月に一度しか来られない体制であれば、お店にとっては「来ない会社」になります。逆に、小さな会社でも担当者が毎週寄ってくれるなら、お店にとっては情報が入る会社です。
規模の一覧からは、この差が読み取れません。
この記事に一覧を載せない理由
私たちも美容ディーラーです。ですので、私たちが「おすすめのディーラー一覧」を作れば、当然おかしなことになります。自社を上に置いた一覧になるか、置かないように気を遣った不自然な一覧になるかのどちらかです。
どちらもお店の役に立ちません。ですから一覧は載せず、かわりに判断の基準だけをお渡しします。基準さえあれば、いま出入りしている会社にも、これから会う会社にも同じように当てはめられます。
選ぶ前に、自店で決めておく3つ
ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。商品を見る前に、決めておくことが3つあります。
①どのくらいの時間でやるメニューか
施術にかけられる時間です。同じ仕上がりを目指すメニューでも、60分でやるのか90分かけるのかで、選ぶ商材はまったく変わります。ここが決まっていないと、良い商材を入れたのに回転が落ちて、結局やめることになります。
②どのくらいのコストなら成立するか
1回あたりにかけられる材料費です。お店全体の材料費率から逆算します。ここを決めずに商品を見ると、「良いけれど高い」「安いけれど物足りない」という感想だけが残って、判断ができません。
③いくらいただくメニューにするか
お客様にご提示する金額です。これを最後ではなく先に決めます。先に決めておくと、商材を見るときの基準がはっきりします。

板場の視点
サロン様に対して、先に商品を提案するのではなくて、「このぐらいの時間で、このぐらいのコストで、このぐらいの単価をいただける、こういうメニューがしたい」。これを決めていただいてから、それに対してご提案する。順番はこちらだと思っています。
この3つが決まっていれば、相談の仕方が変わります。「良い商品ありますか」ではなく、「60分・材料費この範囲・この価格でやりたいのですが、合うものはありますか」と聞けます。この聞き方をされた時点で、商品ベースの営業は成立しなくなります。
つまりこの3つは、仕入れ先を選ぶ基準であると同時に、お店のメニューを守る仕組みでもあります。
実際のメニュー設計の例は、美容室の前処理剤の選び方|定着する店の共通点でも触れています。
仕入れ先を見極める5つの質問
3つが決まったら、相手を見ます。いま出入りしている会社にも、そのまま当てはめてみてください。
1.「やめましょう」と言ってくれるか
いちばん大事な基準だと考えています。何かを入れる提案しかしない相手だと、メニューは増える一方になります。

板場の視点
勇気を持って、何かを入れるときには何かをやめましょうという提案もいると思うんです。サロン様でこれをやるときに、もうこれはやめましょうと。場合によっては、うちの材料を取るのもやめましょう、と申し上げることもあります。
2.「調べます」と言ったことを、後日持ってくるか
小さなことのようですが、ここに差が出ます。お店の側は、聞いたことをずっと覚えています。返ってこないと「この人に聞いても仕方ない」となり、相談が止まります。相談が止まると、次に来るのは商品の案内だけになります。
3.社長だけでなく、現場のスタッフに会おうとするか
決めるのは経営者の方でも、実際に使うのは現場です。現場が使いにくいと感じた商材は、どれだけ良いものでも棚に残ります。現場の様子を見ようとしない相手は、導入したあとのことを考えていない可能性があります。
4.入れたあとに来るか
導入の日までは熱心でも、そのあと来なくなる。よく聞く話です。商材は、入れた日ではなく使われ続けて初めて成果になります。導入後にどう使われているかを見に来るかどうかは、ひと月あれば分かります。
5.知り合いのサロンに紹介したくなるか
最後はこの一つに集約されるかもしれません。紹介するというのは、自分の信用を相手に預けることです。「あの人なら紹介しても大丈夫」と思えるかどうかを、そのまま基準にしていただいてよいと思います。
それでも、替えないほうがいい場合があります
ここまで選び方を書いておいて逆のことを言いますが、替えないほうがいい場合もあります。
価格だけが理由のとき
価格だけで替えると、次も価格で替えることになります。そして価格で選んだ関係では、メニューの相談や教育の相談はしにくくなります。安く仕入れること自体は大事ですが、それだけを基準にすると、相談できる相手がいなくなります。
担当者が替わっただけのとき
会社ではなく、担当者との相性という場合もあります。その場合は、替える前に一度伝えてみていただきたいです。会社によっては担当を替えられますし、伝えたことで対応が変わることもあります。
伝えても変わらないのであれば、そのときに考えれば遅くありません。
まとめ|選ぶ基準は、自店の中にあります
仕入れ先選びは、良い会社を探す作業だと思われがちですが、実際は自店がどうなりたいかを先に決める作業だと考えています。それが決まっていれば、合う相手かどうかは自然に分かります。
明日からできること
- いま出入りしている会社に、5つの質問を当てはめてみる
- 次に入れたいメニューについて、時間・コスト・単価の3つを先に決める
- その3つを持って、いまの担当者に相談してみる
3つ目まで試したうえで話が進まなければ、そのときは他をご覧になってよいと思います。順番として、替える前に一度伝えるというだけのことです。
うまくいけば成功、うまくいかなくても成長だと思っています。一つの考え方として、お役に立てば幸いです。
よくあるご質問
どちらが正解ということはありません。ただ、複数に分ける場合は「どの相談を誰にするか」を決めておくと、メニューが散らかりにくくなります。分けた結果、各社が別々に商品を持ってくる状態になると、この記事の冒頭に書いた「来た順番でメニューが決まる」状態に戻ってしまいます。
規模で決めるより、担当者が自店にどれだけ関われるかで見ていただくほうが実態に合います。取扱メーカーの数は大手が多くなりますが、必要なのは「数」ではなく「自店のメニューに合う一つ」です。逆に、どうしても必要なメーカーが決まっている場合は、そのメーカーを扱えるかどうかが先の条件になります。
まず伝えてみることをおすすめしています。伝えずに替えると、次の会社でも同じことが起きたときに、また同じ判断をすることになります。何が不足しているかを一度言葉にしておくと、次に会う相手を見る基準にもなります。
ご相談ください
私たちは大阪・兵庫を中心に、美容室様への商材のご提案と、メニュー設計・セミナー・オリジナル商品の制作をお手伝いしている美容ディーラーです。
いますぐお取引ということでなくてかまいません。「こういうメニューをやりたいのだけれど、何から決めればいいか分からない」という段階のご相談を、いちばん歓迎しています。時間・コスト・単価の3つを整理するところから、ご一緒させてください。
お問い合わせフォームより、お気軽にご連絡ください。
本記事は美容室・サロン運営者の方に向けたものです。記載の内容は当社がこれまでサロン様とお取り組みしてきた経験に基づく一つの考え方であり、すべてのサロン様に当てはまるものではありません。
